2010年01月28日

初釜に行く

いよいよ50歳を迎えた杉村です。昨年、茶を習い始め、はや1年。若葉マークが絆創膏のように張りつき、まだまだ不作法を繰り返す日々です。今日は、「初釜」を報告します。

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結び柳のさがる床には正月飾り。凜とした中に漂う華やぎを感じながら、初めての初釜に臨んだ。米沢召しと仙台平の袴を新調し、妻には「要介護度5ね」とけなされながら、着付けをすべてしてもらった。せめて角帯の結び方ぐらいは覚えたいのだが、これは今年の宿題としておこう。

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新参にもかかわらず男性というだけで「正客」横の「次客」になり、これだけで心拍数は増す。まず先生による炭手前があり、香がたかれる。清浄な香が部屋に満ち、次に濃茶の前の懐石に移る。

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運ばれてきた松花堂弁当は、金沢の料亭「つる幸」謹製で、新年を寿ぐ盛りつけや彩りの妙に眼福を得るのである。もちろん、味は名料亭に恥じないもので、お昼にはまだ少し時間があったが完食したのは言うまでもない。

「今年も頑張りましょうね」と先生からお酒をついで頂く。盃には能楽をモチーフにした蒔絵がそれぞれ描かれ、座はその曲名がなにかで盛り上がる。藩政期以来、文化を愛でてきたいかにも金沢らしい、しっとりとした空気にも酔うのであった。
席を改めるため待合へ。濃茶の準備が整ったことを告げたのは銅鑼の音だった。港で喧しく鳴る「ジャーンジャーンジャーン」ではない。「ぼぅーーーーーーん」と長い余韻を伴って低く静かに鳴りわたった。

それを合図に席入りし濃茶が始まる。若先生が練った濃茶は、嶋台茶碗で出された。めでたい席に使われるもので、二碗の内側は金と銀、高台の形は五角(鶴)と六角(亀)という取り合わせ。道具の一つひとつに日本人の美意識や感性が息づくのである。

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世事の煩わしさを忘れ、ゆったりと時間を楽しむ贅沢の中で、新年初の濃茶を味わった。濃茶に続いて薄茶となり、席の雰囲気も濃茶の適度な緊張から会話の弾むにぎやかなものに変わった。

それにしても道具の素晴らしさはどうだ。利休らが生きた安土桃山時代につくられ、多くの数寄者たちの手を渡ってきた茶入れや釜、将来された井戸茶碗などが使われていた。古美術の世界は、「時間」という金では計れない尺度で値打ちがつくられ、伝来や次第の整った名品なら10億円を超えることも珍しくないという。驚くべきは金額ではなく、ただひとつの道具にも営々と大切に受け継がれてきた心が宿り、さまざまな物語があるということである。

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「そろそろ絆創膏をはがさねば」と、昨年自宅のメンテナンスをした際、大工さんに頼んで稽古用の置炉を埋めて切った炉の前に座り、買ったばかりの志野茶碗で自服した。果たしてどんな物語となるかはお楽しみだが、とりあえずは粗相をして割らないことを心がけ、2年目の精進に励みたい。
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posted by ライターハウス at 12:44| Comment(3) | TrackBack(0) | 専務日記

2010年01月07日

チャルメラの誘惑

37歳にして、いまだ独身貴族をおう歌するライターの山本です。
世の中、まるで喫煙が“悪”のように、「禁煙」「禁煙」と騒がしく、ヘビースモーカーの自分にとっては、辛い時代に生まれたものだと嘆くだけ。

いつものように会社の裏口でタバコをプカリと吹かしていると、聞き慣れない音が響いてきます。「チャララ〜ララ、チャラララララ〜」。視線の先には「ラーメン」と書かれた赤ちょうちんをさげた小型トラックがゆっくりと走っています。

その昔、北陸一の繁華街・片町には、多くの屋台が軒を連ねていたらしいのですが、自分が酒を飲めるようになったころには、すでに屋台の“や”の字もありませんでした。物珍しいチャルメラに誘い出されるように、同僚のO君とY君も会社から出てきました。みんなでトラックを呼び止めると、ニット帽をかぶったおやじさんが運転席から降りてきました。「ラーメン食べていくかい?座るとこないんやけど、ここで食べてくけ?それとも持ち帰るけ?」。「もちろん、ここで食べるわ」。3人とも会社に戻ってコートに身を包み、万全の防寒対策で屋台へ。騒ぎを聞きつけた後輩のH君も加わり、4人でラーメンができ上がるのを待ちます。
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屋台には、小さな明かりが一つあるだけ。小型トラックの荷台を調理台に改造し、狭いながらもこのトラックがおやじさんの城なんだと思うと、会社員として安住をむさぼっている自分にとって、一国一城の主であるおやじさんが暗がりでも輝いて見えます。

おやじさんの年齢は65歳。何本もの深いしわが彫り込まれた顔からは、もっと上の年齢を想像していたんですが、思ったよりも若い!聞けば、社長をしていた建設会社が3年前に倒産し、一念発起してラーメンの屋台を始め、大阪で修業して腕を磨いたんだそう。60歳を過ぎてから始めたラーメンがどんな味なのか、ますます興味津々です!
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そんな話をしている間に、お待ちかねのラーメンが完成。麺が見えないほど、器から白い湯気が立ち上っています。一見するとシンプルな醤油ラーメンで、ネギとメンマ、チャーシュー、モヤシ、カマボコ、ゆで卵がトッピングされています。まずはスープから。トンコツをベースにしているというわりには透き通っています。あっさりしていて、飽きの来ない感じの味です。特に飲んだ後、小腹が空いたときにはピッタリでしょう。麺は、軽く縮れている玉子麺。程よい硬さで、量的には少な目でした。昔ながらの醤油ラーメンといった印象です。
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4人とも屋台でラーメンを食べるのは初めてとあって、どんどん箸が進みます。冷えた体がラーメンの温かさで、体の中からポカポカとしてきます。「おいしいねぇ。何か隠し味はあるの?」とたずねると、「うーん。お客さんへの愛情かな」と一言。そりゃあ、うまいはず。愛情のこもったラーメンをスープまで一気に飲み干し、お腹も心も大満足。1杯500円という安さも気に入りました。
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「死ぬまでこの仕事を続けてきたいね」というおやじさん。最後にみんなで記念撮影した後、チャルメラを響かせながら走り去るトラックを見送りました。必ずもう一度食べます!苦手な冬に楽しみが一つ増えた山本でした。
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posted by ライターハウス at 20:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 社員日記